子どもにどうやって注意すればいいのか、親にとってとても悩ましい問題ですよね。言い方ひとつで子どもの受け取り方は大きく変わります。ただ怒るのではなく、子どもの心や考える力を育てるためにも、上手な叱り方を知っておくことがとても大切です。
この記事では、年齢や発達に合わせた注意のしかたや声かけの工夫、避けたい叱り方、そして褒めるポイントまで、わかりやすく紹介します。家庭や学校でもすぐに使えるヒントをたっぷりお届けします。
怒るのではなく「伝える」ことが大事
注意するとき、「怒る」ことと「教える」ことはまったく別のものです。怒るのはイライラした気持ちをそのままぶつけること。教えるのは、冷静に「どうしてそれがダメなのか」を伝えて、次からどうすればいいかを導くことです。
たとえばコップを倒して水をこぼしてしまったとき、「なんでこんなことするの!」と怒鳴ってしまうと、子どもは驚いたり怖がったりしてしまいます。それよりも、「水がこぼれると床がぬれて危ないから、次からはゆっくり運ぼうね」と伝える方が、子どもは安心して理解できます。
まずは親自身が深呼吸して落ち着くことが大切です。優しい口調で、目を見て話し、子どもに安心感を与えることが、良い関係づくりにつながります。「怒られた」ではなく「わかった」と思ってもらえるように心がけましょう。
毎回同じように対応することが大切
子どもは大人よりもルールの一貫性に敏感です。ある日は怒られなかったのに、次の日には同じことで怒られる……そんなことが続くと、子どもは「どうしてダメなのかがわからなくなってしまいます」。
たとえば「おもちゃは遊んだら片付けよう」というルールがあるとします。ある日は片付けないままでも何も言わず、別の日には強く注意されると、子どもは混乱します。だからこそ、親の対応にも一貫性が必要です。
また、家庭内のルールは家族全員で共有し、できれば目に見える場所に書いて貼っておくのも効果的です。お父さんとお母さんで言うことが違うときは、子どもにとってストレスになります。大人同士で話し合っておくことも大切です。
年齢ごとにちがう伝え方のコツ
子どもは年齢によって理解できることが違います。だから、伝え方も変えていく必要があります。
赤ちゃん(0〜1歳)|環境を整える
この時期の赤ちゃんは、まだ言葉の意味をしっかり理解していません。だから「ダメ!」と声を荒げるよりも、危ないものは手の届かないところに置いたり、他の物に注意をそらすなど、環境を工夫することが大切です。
幼児(1〜3歳)|短くてわかりやすい言葉で
「イヤイヤ期」と言われるこの時期は、自分の気持ちを伝えたいのに上手くできず、かんしゃくを起こすこともあります。短くはっきりと、「ダメ」だけでなく「どうしてダメなのか」もセットで伝えましょう。
「ストーブは熱いから危ないよ」「階段で走ると転んじゃうよ」など、理由があると子どもも少しずつ納得できるようになります。
幼児後期〜小学生(4〜12歳)|気持ちを考えさせる
この時期になると、子どもは考える力が少しずつ育ってきます。「なぜそれがよくないのか」「どうすればよかったのか」といった話を、対話の形で伝えていくのがおすすめです。
たとえば「人をたたくのはダメ」だけで終わらせず、「〇〇くんはたたかれて痛かったよね。もし自分がやられたらどう思う?」など、気持ちを考えさせるような声かけをしてみましょう。
中学生以上(13歳〜)|対等な話し合いを意識
中学生以降は、自分の考えを持つようになり、大人との関係も対等になっていきます。指示だけでは反発されてしまうこともあります。
まずは「ちゃんと話を聞いてくれる大人」であることが大切です。子どもの気持ちを受け止めて、「なるほど、そう思ったんだね」と共感してから、「じゃあこうしてみるのはどう?」と提案していくような関係づくりが理想です。
やってはいけない叱り方
次のような叱り方は、子どもの心を傷つけたり、逆に言うことを聞かなくなったりする原因になります:
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大声で怒鳴る
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「お前はダメな子だ」と人格を否定する
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他の子と比べてしまう(「〇〇ちゃんはできるのに」など)
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無視をする、何も言わずに怒る
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長すぎるお説教
叱るときは、「ダメな子」ではなく「その行動がよくなかった」と伝えるようにします。「おもちゃを投げたのはよくないよ。誰かに当たったら危ないよね」といったように、行動を中心に説明しましょう。
いいところはしっかり褒める
叱ることだけに意識が向くと、子どもは「自分はダメなんだ」と思いがちです。だからこそ、できたことはしっかり褒めることも忘れないようにしましょう。
たとえば「片付けできたね!」「ちゃんと順番を守ってえらいね」など、行動を見てすぐに声をかけてあげると、子どもは「認めてもらえた」と感じます。
結果だけでなく、努力や過程も大切にします。「毎日練習してたね」「最後まであきらめなかったね」など、頑張りを認める言葉がけが、子どものやる気を育てます。
気持ちは受け入れて、行動を教える
子どもはまだ、自分の感情を上手にコントロールできません。怒って物を投げてしまうこともあります。でも、そのときに「怒っちゃダメ!」と言ってしまうと、感情を否定されたように感じてしまいます。
「怒る気持ちは自然だよ。でも、物を投げるのはやめようね」など、代わりの行動を提案するようにしましょう。
感情を安心して表現できる環境があると、子どもは少しずつ自分の感情を言葉で伝えられるようになり、落ち着いて考えられるようになります。
普段の会話が大事!信頼関係を作ろう
注意するときだけでなく、ふだんの会話やふれあいもとても大切です。子どもが話しかけてきたときは、スマホやテレビを見る手を止めて、しっかり目を見て話を聞いてあげましょう。
「そうなんだ」「それはうれしかったね」など、共感の言葉をかけることで、子どもは「話を聞いてもらえた」と感じます。この積み重ねが信頼関係をつくり、いざ注意するときにも素直に聞き入れてもらえるようになります。
毎日のスキンシップや「ありがとう」「うれしいよ」といった感謝の気持ちを言葉にすることも、子どもの心を育てる大事な時間になります。
おわりに
叱るというのは、子どもを大切に思うからこその行動です。イライラした気持ちをそのままぶつけるのではなく、「どうしてそれがいけなかったのか」をていねいに伝えることが、子どもの成長につながります。
子どもの年齢や性格に合わせて伝え方を工夫し、叱ることが「こわい時間」ではなく「学びの時間」になるように意識していきましょう。
そして、日々がんばっているあなた自身にも、「よくやってるね」「いつもありがとう」と声をかけてあげてくださいね。
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